社外マーケティング担当を機能させる業務範囲設計と契約の作り方

社外マーケティング担当を機能させる業務範囲設計と契約 アイキャッチ

「マーケ担当を雇うのは難しいので、業務委託で社外の人にお願いしたい」

「社外マーケティング担当に何をどこまで任せていいのか分からない」

「業務委託契約はどう作るのが正解か、揉めない契約にしたい」

社外マーケティング担当——つまり雇用ではなく業務委託で活用するマーケのプロ——は、中小企業のWeb集客リソース確保の有力な選択肢です。

ところが、実際に契約しようとすると、業務範囲や契約条件をどう設計すればいいのか分からず、足踏みする経営者が少なくありません。

👉 社外マーケティング担当を機能させる鍵は、「業務範囲の設計」と「契約条件の言語化」にあります。

本記事では、社外マーケティング担当を活用する際に、業務範囲と契約条件をどう設計すれば失敗しないかを、実務に即して解説します。


社外マーケティング担当とは

まず用語の整理から。

「社外マーケティング担当」とは、雇用関係を結ばずに、業務委託契約で自社のマーケ担当者として活動してもらう人を指します。

似た言葉に「外部マーケティング担当」「マーケティング顧問」「CMO代行」などがありますが、「社外マーケティング担当」という呼び方は、業務委託契約での実務寄りの関与をイメージするときに使われることが多いです。

雇用形態の違いを整理すると次の通りです。

形態契約関与の深さコスト
雇用(正社員マーケ)雇用契約深い・フルタイム年収500〜800万 + 諸経費
社外マーケティング担当(業務委託)業務委託契約中〜深・部分稼働月10〜50万円
マーケティング顧問顧問契約軽め・助言中心月5〜15万円
広告代理店・制作会社委託契約領域限定月10〜30万円〜

社外マーケティング担当は、雇用と顧問の中間的な位置にあります。手を動かす実務にもある程度関与しつつ、雇用ではないので柔軟性が高いという特性です。


社外マーケティング担当の役割

社外マーケティング担当が実際に担う業務は、契約内容によって大きく変わります。代表的な範囲は次の通りです。

戦略レイヤー

  • マーケティング戦略・年間プランの立案
  • KPI・KGIの設計
  • 予算配分の助言
  • 市場・競合分析

実行統括レイヤー

  • 外注先(代理店・制作会社・ライター)の選定・指揮
  • 月次レポートの作成・解釈
  • 施策の優先順位付け
  • 経営層への報告資料作成

実行レイヤー(契約による)

  • 広告運用(リスティング・SNS広告等)
  • SEO戦略・記事ディレクション
  • LP改善・CVR最適化
  • メルマガ・CRM設計
  • SNS運用方針

社外マーケティング担当の特徴は、戦略から実行まで横断的に関わることができる点です。代理店や制作会社のように”領域限定”ではなく、自社のマーケ機能の幅広い領域に責任を持ちます。


業務範囲を設計する3つの軸

業務範囲を設計する3つの軸

社外マーケティング担当を機能させる第一歩は、業務範囲の設計です。曖昧なまま契約すると、双方の期待値ズレで揉めます。

業務範囲を設計するときの軸は、次の3つです。

軸①:戦略 vs 実行のバランス

「戦略だけ」か「実行も含むか」を決めます。

  • 戦略のみ:方針・KPI設計・施策の判断。実務は代理店・制作会社に依頼
  • 戦略 + 実行統括:上記 + 外注先の指揮・進捗管理・報告まで
  • 戦略 + 実行統括 + 一部実務:上記 + 重要な実務(記事監修・LP設計など)も担当

中小企業の多くは、戦略 + 実行統括の組み合わせが現実的です。実務はすべて社外担当にやらせるとコストが膨らみますし、すべて社内でやると追いつきません。

軸②:稼働量

月の稼働時間・打ち合わせ頻度を決めます。

  • 軽め:月10〜15時間、月1〜2回の定例ミーティング
  • 標準:月20〜30時間、月2〜4回の定例+随時相談
  • 重め:月40〜50時間、週次MTG+随時相談

業務範囲が広いほど稼働量も増えます。「広告も、SEOも、SNSも、CRMも」と範囲が広がるなら、稼働量も増やす必要があります。

軸③:対応領域

「Web集客全般」「広告中心」「SEO中心」など、対応する施策領域を決めます。

社外マーケティング担当の強みは横断的に見られることなので、特定領域に絞ると価値が薄れます。一方で、すべての領域を完璧にカバーできる人材は希少です。

現実的には、

  • 横断的な戦略 + 1〜2領域の深い実務

という組み合わせが多くなります。たとえば「マーケ全般の戦略 + 広告運用の実務」「マーケ全般の戦略 + SEO・コンテンツの実務」など。


業務委託契約に書くべき項目

業務委託契約に書くべき項目

業務範囲が決まったら、契約書に落とし込みます。社外マーケティング担当の業務委託契約に書くべき項目は、次の通りです。

必須項目

① 業務範囲

何を、どこまでやるのか。やる範囲とやらない範囲の両方を明示します。

② 稼働量・打ち合わせ頻度

月の稼働時間、定例MTGの頻度、随時相談の対応範囲。

③ 報酬と支払条件

月額固定か時間単価か、支払サイト(月末締め翌月末払い等)、追加業務発生時の料金。

④ 契約期間と更新条件

最低契約期間(3ヶ月、6ヶ月など)、自動更新の有無、更新時期の通知。

⑤ 解除条件

どちらかが終了したい場合のルール(解除予告期間、即時解除の条件)。

⑥ 機密保持(NDA)

業務上知り得た情報の取り扱い。雇用と違い、契約終了後もNDAが続く期間を明示。

⑦ 知的財産・成果物の権利

社外マーケティング担当が作成した提案資料、施策設計、レポート等の権利帰属。

⑧ 報告義務

月次レポート、施策結果の共有、データの保管方法。

推奨項目

⑨ 評価サイクル

3ヶ月ごとの振り返り、KPI達成度の評価、継続判断のタイミング。

⑩ 兼業の取り扱い

社外マーケティング担当が他社の業務も並行している場合、競合他社との利益相反防止。

⑪ 緊急時の対応

トラブル時の連絡先・対応スピード。

⑫ 再委託の可否

社外マーケティング担当が、さらに別の業務委託先を使ってよいか。


契約料金の相場と料金体系

社外マーケティング担当の料金体系は、おおむね次のパターンに分かれます。

パターン①:月額固定型

最も一般的な料金体系です。

  • 月10万円〜:軽めの稼働(月10時間程度、戦略助言中心)
  • 月20〜30万円:標準稼働(月20〜30時間、戦略 + 実行統括)
  • 月40〜50万円以上:重めの稼働(月40時間以上、戦略 + 実行統括 + 一部実務)

中小企業のCMO代行・社外マーケ担当の主流価格帯は月20〜30万円です。

パターン②:時間単価型

時間ベースで稼働する形態。

  • ジュニアクラス:5,000〜8,000円/時間
  • ミドルクラス:8,000〜12,000円/時間
  • シニアクラス:12,000〜20,000円/時間

スポット相談・短期プロジェクトに向きます。

パターン③:成果報酬型

問い合わせ件数・売上に応じた報酬。中小企業のマーケ業務ではほぼ採用されません。理由は、

  • マーケ施策の成果は外部要因(市場・季節・競合)の影響が大きい
  • 担当者が品質よりも”件数稼ぎ”に走るリスク
  • 成果指標を巡って揉めやすい

成果報酬型に強く惹かれた場合は、月額固定 + 成果インセンティブのハイブリッド型で検討するのが現実的です。


社外マーケティング担当を活用する流れ

実際に活用する流れを、ステップで整理します。

STEP1:自社の現状整理(契約前)

  • マーケ業務のうち、何を任せたいか
  • 社内で動ける範囲はどこまでか
  • 予算はいくらまで出せるか
  • 期待する成果と期間

STEP2:候補者探し

  • 知人紹介
  • フリーランス紹介プラットフォーム
  • ビジネスSNS(X、LinkedIn等)
  • マーケティング顧問・CMO代行サービス会社

STEP3:初回面談

  • 自社の状況・課題を共有
  • 候補者の経歴・経験を確認
  • 業務範囲・期待値のすり合わせ
  • 料金感の確認

STEP4:契約締結

  • 業務範囲・条件を契約書に落とし込む
  • NDAの締結
  • キックオフ日程の確定

STEP5:オンボーディング(最初の1〜2ヶ月)

  • 既存のサイト・施策・データの共有
  • 関係者(経営者・社員・外注先)の紹介
  • 初期方針の策定
  • 初月の施策決定

STEP6:定常運用

  • 月次定例MTG
  • 施策実行・レポーティング
  • 経営層への報告

STEP7:3ヶ月レビュー

  • KPI達成度の評価
  • 業務範囲の見直し
  • 継続判断

よくある失敗パターンと対策

社外マーケティング担当の活用でよくある失敗は、次の5つです。

失敗①:業務範囲が曖昧

「マーケ全般お任せ」と契約すると、双方の期待値がズレます。

対策:契約書に「やる範囲」「やらない範囲」を明示。

失敗②:社内の窓口役がいない

経営者が忙しすぎて連絡が滞ると、社外担当も動けません。

対策:社内に1人、日常的な窓口役を置く。

失敗③:レポートが目的化する

月次レポートを作ることが目的になり、本来の施策が薄くなる。

対策:レポートはKPI中心の簡潔なものにし、施策の意思決定の場として定例MTGを設計する。

失敗④:成果が出ない期間に判断できない

最初の3ヶ月は成果が出にくいので、「効果がないのでは」と疑心暗鬼になる。

対策:契約時に「3ヶ月レビュー」のタイミングを決め、それまでは中間指標で進捗を見る。

失敗⑤:契約解除が揉める

合わなかった場合に、契約解除を切り出しにくい関係になる。

対策:契約書に解除予告期間を明記し、3ヶ月ごとに継続判断を入れる仕組みにする。


社外マーケティング担当に向く会社・向かない会社

社外マーケティング担当の活用が向くのは、次のような会社です。

向く会社

  • マーケ担当者の採用が現実的でない(中小企業の大半)
  • 社内にマーケの判断者がいない
  • 短期間で動き始めたい(採用は時間がかかる)
  • 業務量が専任を雇うほどではないが、確実に進めたい
  • 外注先を統括する役割がほしい

向かない会社

  • マーケ業務量が圧倒的に多く、専任複数名が必要なレベル
  • 社外の人を信用できない経営者
  • 細かい指示・管理をしたい経営者(”任せる”ことができない)
  • マーケに対して「短期で確実に売上が上がる魔法」を期待している
  • 業務範囲・期待値を言語化することに抵抗がある

「社外の人に任せる」というスタンスを取れる会社は活用しやすく、すべて社内でコントロールしたい会社には合いません。


よくあるご質問

Q. 業務委託マーケターと業務委託ライターは違うのですか?

違います。業務委託マーケターは戦略立案や施策統括も含むマーケ全般の担当、業務委託ライターは記事執筆や原稿作成が中心の業務範囲です。社外マーケティング担当を雇う場合は前者を想定します。

Q. 月いくらの予算で社外マーケティング担当を活用できますか?

軽めの稼働(戦略助言中心)なら月10〜15万円、標準的な活用(戦略 + 実行統括)なら月20〜30万円、重めの活用(実行も含む)なら月40〜50万円が中小企業の現実的なレンジです。

Q. 業務委託契約はどれくらいの期間で結ぶのが普通ですか?

最低3ヶ月、推奨6ヶ月、自動更新で1年というのが一般的です。最初から長期契約にすると合わなかった場合に縛られるので、3ヶ月でいったん見直すのが現実的です。

Q. 社外担当に対して、社員と同じレベルで指示してもいいですか?

業務範囲内であれば指示は可能ですが、社員と同じレベルで時間・場所・進め方を細かく指定するのは業務委託契約の本旨から外れます。業務委託は成果ベースの関係で、社員のような細かい指揮命令系統には入りません。この違いを理解した上で関わるのが重要です。

Q. 社外マーケティング担当を入れたら、社員のマーケスキルは育ちますか?

社外担当が社内に知見を残す前提で動くかどうかによります。経験のある社外担当は、施策の判断基準、レポートの読み方、外注先との付き合い方を社内に転写することを意識して進めます。契約前にこの点を確認しておくと、長期的に社内資産が育ちます。


まずは「業務範囲の設計」から始めませんか

社外マーケティング担当を機能させる鍵は、業務範囲の設計と契約条件の言語化です。

「任せたいことを整理する」段階は、社外担当を選ぶ前にやっておくと、契約後の立ち上がりが格段に早くなります。社内で整理しきれない場合は、初回ヒアリングで一緒に整理することも可能です。

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