「Web担当者が、来月で辞めることになった」
中小企業の経営者にとって、これはかなり背筋が冷える知らせです。なぜなら、社内でWebに触れていたのがその人ひとりだった、というケースが非常に多いからです。
ホームページの更新も、広告の管理も、SNSも、解析も、外注先とのやり取りも——気づけば全部その担当者の頭の中と、その人しか知らないログイン情報の中にあった。
👉 Web担当者の退職で本当に怖いのは「人がいなくなること」そのものではありません。会社の資産(アカウント・データ・運用ノウハウ)が、辞める一人に紐づいたまま外に出ていってしまうことです。
本記事では、Web担当者が辞める/辞めた中小企業が、事故を防ぎながら引き継ぎを進め、社内に引き継ぎ先がいないときにどう外部へ移行するかを、実務手順として解説します。
まず理解すべき:退職で「止まるもの」と「失うもの」
Web担当者が抜けると、目に見えて止まるものと、見えないまま失われるものの2種類が発生します。
目に見えて止まるもの
- ホームページの更新:新着情報・実績・採用ページが更新できなくなる
- 広告運用:配信中の広告を誰も触れず、予算だけが消化される/逆に止まったまま機会損失する
- 問い合わせ対応:フォームからの通知や問い合わせ管理が宙に浮く
- 外注先との窓口:制作会社・代理店との連絡役が消え、要件が伝わらなくなる
見えないまま失われるもの(こちらが本当に怖い)
- アカウント・パスワード:その人しか知らない管理画面のログイン情報
- ドメイン・サーバーの契約情報:更新期限や管理会社が不明になる
- 運用の経緯と判断基準:「なぜこの施策をやっているか」という文脈
- データの蓄積:解析データや顧客リストへのアクセス権
👉 止まるものは「困った」で済みますが、失うものは取り返しがつきません。特にアカウント情報は、退職後に連絡が取れなくなると、最悪サイトやドメインを失うリスクすらあります。
退職が決まったら最初にやること:資産確保チェックリスト
引き継ぎ資料を作る前に、まず会社の資産を確保するのが最優先です。担当者がまだ在籍しているうちにしかできないからです。
① アクセス権・アカウントの棚卸し
次の管理画面のログイン情報を、すべて洗い出して回収します。
- ドメイン管理(お名前.com、ムームードメイン等)
- レンタルサーバー(エックスサーバー、さくら等)
- WordPress等のCMS管理画面
- Googleアナリティクス(GA4)/Googleサーチコンソール
- Google広告/Yahoo!広告/Meta(Facebook・Instagram)広告
- 各SNSアカウント
- Googleビジネスプロフィール(MEO)
- メール配信ツール・問い合わせフォーム・予約システム
👉 ポイントは、パスワードを個人のものから会社管理のものへ切り替えること。可能なものは管理者権限を経営者または別の社員のアカウントに移し、退職者のアカウントは削除できる状態にしておきます。
② 契約・支払い情報の確認
- ドメイン・サーバーの契約更新日と支払い方法(担当者個人のカード払いになっていないか要確認)
- 各ツールの月額契約と請求先
- 外注先との契約内容・契約期間
ここが個人名義・個人カードのままだと、退職後に更新が止まってサイトが消える事故が実際に起きます。
③ 外注先・取引先の連絡先
- 制作会社・広告代理店・保守会社の担当者名と連絡先
- 進行中の案件と納期
この3点を担当者の在籍中に押さえれば、最悪の事故(資産の喪失)は防げます。引き継ぎ資料の充実度は二の次で構いません。

引き継ぎの進め方:3ステップ
資産を確保したら、運用そのものの引き継ぎに移ります。
STEP1:「何をやっているか」を可視化する
退職者に、現在動いている業務を一覧で書き出してもらいます。完璧なマニュアルは不要です。次の粒度で十分です。
- 業務名(例:ブログ更新/広告運用/SNS投稿)
- 頻度(毎週/毎月/随時)
- 使っているツール
- かかっている時間の目安
これで「会社のWeb業務の全体像」が初めて見えます。多くの会社が、ここで初めて「思っていたより担当者が色々やっていた」と気づきます。
STEP2:業務を「止める・続ける・任せる」で仕分けする
一覧化した業務を、次の3つに仕分けします。
- 止める:成果が見えず、続ける理由が薄い業務(思い切ってやめる)
- 社内で続ける:別の社員でも回せる単純な更新作業
- 外部に任せる:専門知識が要る業務(広告・SEO・解析・改善)
👉 退職を「業務の棚卸しのチャンス」と捉えると、惰性で続いていた施策を整理できます。全部を引き継ごうとしないことが大切です。
STEP3:引き継ぎ相手を決める
仕分けの結果に応じて、引き継ぎ先を決めます。ここで多くの中小企業が壁にぶつかります。社内に引き継げる人がいないのです。
引き継ぎ相手が社内にいないときの選択肢
専任のWeb担当者がいた会社ほど、後任が社内に見つかりません。このときの選択肢は3つです。
| 選択肢 | 中身 | 向くケース |
|---|---|---|
| ① 後任を採用する | 新たにWeb担当者を雇う | 業務量が多く、年収600万円規模を出せる |
| ② 既存社員に兼務させる | 営業・広報などに兼ねさせる | 業務が単純更新中心で量が少ない |
| ③ 外部に移行する | Web担当者代行・運用代行に委託 | すぐ穴を埋めたい/専門業務が含まれる |
なぜ「すぐ採用」は現実的でないか
Web担当者の採用は、中小企業にとってそもそも難易度が高い取り組みです。求人を出しても応募が集まりにくく、採れても立ち上がりに3〜6ヶ月かかります。退職による空白を埋めるスピードには間に合いません。採用を目指すにしても、その間の運用を止めないために、つなぎの外部リソースはほぼ必須になります。
採用・兼務・外注の選び方の全体像は、中小企業にWeb担当者がいないときの現実解(採用・兼務・外注の選び方)で詳しく整理しています。
外部移行がもっともスムーズな理由
退職による不在は「今すぐ・専門業務を含めて穴を埋めたい」ケースがほとんどです。この条件にもっとも合うのが、外部のWeb担当者代行への移行です。
- 契約後すぐに動ける(採用のような立ち上がり期間が不要)
- 広告・SEO・解析など専門業務もまとめて引き受けられる
- 退職者からの引き継ぎを、専門家が受け取るので取りこぼしが少ない
👉 退職者がいるうちに外部パートナーへ引き継ぐと、引き継ぎの質が段違いになります。素人同士の引き継ぎと違い、受け手が要点を分かっているからです。

二度と「退職で全部止まる」状態にしないために
そもそもWeb担当者の退職でここまで混乱するのは、業務が一人に属人化していたからです。再発を防ぐには、体制側を変える必要があります。
属人化を防ぐ3つの仕組み
- アカウントは必ず会社管理:個人名義・個人カードを使わない。管理者権限は経営者も持つ
- 複数人が基本操作できる状態:更新作業は最低2人が触れるようにする
- 外部パートナーを”常設”する:社内が一人でも、外部に運用の軸足があれば、社内担当が変わっても止まらない
特に3つ目は効果的です。社内担当が窓口・実行を担い、外部のWeb担当者代行が戦略と運用の軸を持つ体制にしておけば、社内の人が辞めても運用の連続性が保たれます。属人化の最大のリスクは、一人に依存することそのものです。
よくある失敗パターン
① アカウント情報を回収せず退職させてしまう
最も多く、最も深刻な失敗です。退職後に連絡がつかなくなり、サイトの更新もドメイン更新もできなくなる。在籍中の資産確保が何よりも優先です。
② 完璧な引き継ぎ資料を求めて時間切れになる
立派なマニュアルを作ろうとして、結局退職日に間に合わない。資料の完成度より、アクセス権の確保と業務の全体像把握を優先すべきです。
③ 全部を後任に引き継ごうとする
惰性で続いていた施策まで引き継ぐと、後任の負担が過大になります。「止める業務」を決めるのが先です。
④ 「採用すればいい」と空白期間を放置する
採用には時間がかかります。決まるまでの数ヶ月、運用を止めると競合に差をつけられます。つなぎの外部リソースを並行で確保すべきです。
⑤ また一人に集約してしまう
後任を立てても、再び一人に全部を集約すれば同じことが起きます。属人化させない仕組みづくりまでがセットです。
よくあるご質問
Q. 退職まで時間がありません。何から手をつけるべきですか?
迷わずアカウント・パスワードの回収からです。ドメイン・サーバー・広告・解析のログイン情報を会社管理に移すこと。これだけは在籍中にしかできず、失うと取り返しがつきません。
Q. すでに担当者が辞めてしまい、ログイン情報が分かりません。
ドメイン・サーバーは管理会社に連絡すれば、本人確認のうえで復旧できる場合があります。各ツールもアカウント復旧の手続きがあります。早ければ早いほど復旧の難易度は下がるので、すぐ着手してください。外部の専門家に状況整理を依頼すると、復旧の順序を間違えずに進められます。
Q. 後任が決まるまでのつなぎだけ、外部に頼めますか?
可能です。期間限定で運用を引き継ぎ、社内体制が整ったら巻き取る、という形も設計できます。むしろ退職直後の混乱期こそ、外部に一度受け止めてもらうのが現実的です。
Q. 外部に頼むと、また同じように「その業者しか分からない」状態になりませんか?
契約時に「アカウントは自社管理」「運用状況を定例で共有」を条件にすれば、属人化(業者依存)は避けられます。ROOT SCOPEでは、社内に運用が残る形での伴走を前提にしています。
まずは「失わないこと」から
Web担当者の退職で最優先すべきは、人を埋めることより、会社の資産を失わないことです。アカウントを確保し、業務の全体像を可視化し、止める・続ける・任せるを仕分ける。そのうえで、空白を埋める手段(採用・兼務・外部移行)を選ぶ——この順序を守れば、退職は混乱ではなく体制を見直すチャンスになります。
ROOT SCOPEでは、初回ヒアリング(60〜90分)で、退職にともなう資産の確保状況・引き継ぎの進め方・つなぎの運用設計までを一緒に整理しています。「何から手をつければいいか分からない」状態のままで構いません。
ROOT SCOPEは、中小企業の”Web担当者不在”を埋める伴走型支援を行っています
ROOT SCOPE(ルートスコープ)は、神奈川県央エリアを中心に、中小企業・小規模事業者の「Web担当者がいない」課題を伴走型で埋めるサービスを提供しています。
Web担当者代行:御社の”外部Web担当者”として、戦略立案から広告・SEO・MEO・SNS・LP改善・運用まで一括で引き受けます。手段ありきではなく、成果から逆算して「いま何をやるべきか」を決め、実行までやり切ります。
事業開発支援:新商品・新サービス・新規事業の立ち上げを、仮説構築 → テスト販売 → ローンチまで一気通貫で支援します。”作る前に勝ち筋を見極める”プロセスで、無謀な投資を避けます。
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